「確定申告で医療費控除をすれば税金が戻る!」

というのはご存知の方でも、「医療費控除の対象となる医療費」を正確に把握している人は少ないな、というのが私が顧問先と話をしていた時の印象です。

そこで知っているようでよく理解していない医療費控除について、間違えやすい点を中心に解説していきます。

 

医療費控除は年間10万円以上使わないと受けられない!?と思っていませんか?

まずこれが一番多い勘違いだと思います。

実は年間10万円以下でも医療費控除が受けられる人がいます。

どういう人が対象となるか、医療費控除の国税庁のHPから計算式を確認してみましょう。

医療費控除(最高200万円)=
(1)その年の医療費の合計額 -(2)保険金等で補填される金額 -(3)10万円

最初に「(1)のその年の医療費の合計額」はご家族全員(同一生計親族)分でOK!というのはご存知かと思いますが念のため確認しておきましょう。

そして話を戻しますが、上記が医療費控除の基本式なので、確かに(3)で10万円引かれるため、10万円以上ないと医療費控除の対象額が0円以下になってしまいますね。

でも実は(3)が10万円となる人は「その年の総所得金額が200万円以上の人」で、逆に「その年の総所得金額が200万円以下の人」は(3)が「総所得金額×5%」の金額となります。

つまり所得の少ない人であれば年間の医療費が10万円以下でも医療費控除により税金が還付される可能性があるのです!

具体的に「総所得金額が200万円以下の人」とは?

「総所得金額×5%」以上医療費を使えばいいのはわかったが、ところで一体「総所得金額」って何?と思いますよね。

簡単言えば給与所得や年金の所得などの合計額のことですが、「所得」とは収入そのものの金額ではなく下記の式で計算されたものです。

所得金額 = 収入(給与や年金などの額面) - 所得控除(給与や年金など)

 

本当は年金のみの方が所得控除が大きいため面白いのですが、年金生活者はあまりこのブログを読まなさそう…(?)なので、給与のみの方で所得金額が200万円以下になる場合を見てみましょう。

平成28年分の給与所得控除の速算表(国税庁HPより)

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,800,000円以下収入金額×40%
650,000円に満たない場合には650,000円
1,800,000円超3,600,000円以下収入金額×30%+180,000円
3,600,000円超6,600,000円以下収入金額×20%+540,000円
6,600,000円超10,000,000円以下収入金額×10%+1,200,000円
10,000,000円超12,000,000円以下収入金額×5%+1,700,000円
12,000,000円超2,300,000円(上限)

と上記の表を参考に大まかに収入別にあてはめてみると

年収300万円の方

給与収入 300万円 - 給与所得控除 108万円 = 192万円(総所得金額)
  → 192万円×5% = 9.6万円以上なら可能

となり、年収300万円の人は「総所得金額が192万円<200万」となったため、このくらいの年収の方からギリギリですが年間10万円以下でも医療費控除が受けられそうです。

年収200万円の方

給与収入 200万円 - 給与所得控除 78万円 = 122万円(総所得金額)
  → 122万円×5% = 6.1万円以上なら可能

このケースを見てみるとご夫婦が共働き(夫:年収500万円、妻:年収200万円)と仮定して家族の医療費がピッタリ10万円だった場合、医療費控除の王道である

「所得の多い人で受けた方がお得!」

と思い込んでしまい

「でもピッタリ10万円なら医療費控除は夫から受けられないから今年は何もしない!」

ではなく、妻の方で確定申告をすることによって妻の方の所得税と住民税がざっくり

 家族の医療費10万円 - 6.1万円 = 3.9万円(医療費控除額)

→ 3.9万円の控除 × 約15%(所得税5%+住民税10%)
 = 5,850円 位ですが妻の方で節税になります。

 

力説してきましたが、このくらいなら医療費を集計して確定申告する手間を考えたらやらない?という声が聞こえてきそうですが…。

ちなみに

年収150万円の方

給与収入 150万円 - 給与所得控除 65万円 = 85万円(総所得金額) 
 → 85万円×5% = 4.2万円以上なら可能

となります。

なお、年収103万円以下の方はご存知の通り、基本的には所得税はかかりませんので医療費控除で戻すものがありません。

※ここでは便宜上、社会保険料控除や扶養控除等を省略して説明いたしました。

● 医療費控除の対象となる医療費(国税庁HPより)

病状などに応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額が対象となります。

医療費控除の対象控除の対象に含まれるもの(例示)控除の対象に含まれないもの(例示)
  • 医師、歯科医師による診療や治療の対価
  • 治療のためのあんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師などによる施術の対価
  • 助産師による分べんの介助の対価
  • 医師等による一定の特定保健指導の対価
  • 医師等による診療等を受けるために直接必要なもので、次のような費用
  • 通院費
  • 入院の対価として支払う部屋代や食事代
  • 医師等の送迎費
  • 医療用器具の購入や賃借のための費用
  • 義手、義足、松葉づえや義歯等の購入の費用
  • 身体障害者福祉法などの規定により、都道府県や市町村に納付する費用のうち、医師等の診療費用などに当たるもの
  • 6 か月以上寝たきりの人のおむつ代で、その人の治療をしている医師が発行した証明書(「おむつ使用証明書」)のあるもの
  • 容姿を美化し、容ぼうを変えるなどの目的で行った整形手術の費用
  • 健康診断の費用
  • 自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車料金
  • 治療を受けるために直接必要としない、近視や遠視のための眼鏡等の購入費用
  • 保健師や看護師、准看護師による療養上の世話の対価
  • 左記以外で、療養上の世話を受けるために特に依頼した人に支払う療養上の世話の対価
  • 親族に支払う療養上の世話の対価
  • 治療や療養に必要な医薬品の購入の対価
  • かぜの治療のために使用した一般的な医薬品の購入費用
  • 医師等の処方や指示により、医師等による診療等を受けるため直接必要なものとして購入する医薬品の購入費用
  • 疾病の予防又は健康増進のために供されるものの購入費用
  • 病院、診療所又は助産所などへ収容されるための人的役務の提供の対価
  • 病状からみて急を要する場合に病院に収容されるための費用
  • 親族などから人的役務の提供を受けたことに対し支払う謝